あれにけるふるの社のもみぢばや秋ばかりする朱の玉垣
●現代語訳●
荒れはてた古い社で見事に色づく紅葉、
それはまるで秋にだけあらわれる朱色の美しい垣根のようだ
・・・
秋の歌です。冬を目前にしてすべり込みです。
最初に読んだときは、なんのことやらわからず(全部ひらがなだったし!)、「もみちはや?何ソレ?何があけのたまかき、だって??」と上の漫画における「その他大勢の貴族」のような反応を示してしまいましたが、ああ紅葉ね、紅葉が玉垣なのね!としばらくしてからようやく気づき、なかなかいいじゃん!と思っていました。
ところが調べてみると、この比喩表現、当時の常套句だったようで少しガッカリ。
紅葉はのあけの玉垣いく秋の 時雨の雨に年ふりぬらん(寂延法師)
まあ常套句であったとしても、時代を経た古びた社と、紅葉の朱のコントラストはなかなか美しいんじゃないかなと思います。
社の歴史とともに色あせてしまった玉垣の朱。
秋にだけは、社頭の紅葉がその朱を取りもどす。
そしてその朱色の鮮やかさというのは、この社が威勢を誇って居た往時を思い起こさせるものなんじゃないかな、とも思いました。
「ふる」の社というと一般的には「布留」とかけられ、石神神宮をさすようです。
関係ないですけど、厩戸王子が頭をよぎりますね!ブルブル。
題詠なのでしょうが、またまたバーチャル社頭紅葉。
和歌仲間と一緒にピクニック的な気分で描きました。
貴族の皆さんには、申し訳ないと思いつつも私の気持ちを代弁する形で若干お馬鹿さんふうになっていただきました。ゴメンナサイ!
さて、この歌は周囲の評価は高かった(?)ようで、俊成選の「治承三十六人歌合」にも入っています。
当時の歌人ベスト36に選ばれているんですから、なかなかすごいじゃないですか!
あと鎌倉時代後期の私撰集「夫木抄」にも入集。
「夫木抄」では作者名の取り違いがあるようですが、経正をはじめ、平家の面々の歌が結構入っています。
(2008/11/02)