千載(よみ人しらず)
山深みほぐしのまつはつきぬれど鹿におもひをなほかくるかな
いかなれば上葉をわたる秋風に下折れぬらむ野べの苅萱
新勅撰
むら雲のと山のみねにかかるかと見ればしぐるるしがらきのさと
玉葉
ちるぞうき思へば風もつらからず花をわきてもふかばこそあらめ
あづまやの軒ばにねざせあやめ草うゑぬしのぶもおひずやはあらぬ
さみだれに水しまされば音羽河せきいれぬ宿も落つる滝つせ
われゆゑにぬるるにはあらじ大かたの秋のさがなる露ぞおくらん
衣でにありとしりぬるうれしさに涙の玉をかけぞそへつる
新拾遺
入日さす方をながめてわたの原波路に秋をおくるけふかな